「癒し」と「自立」
けんこ~コラム・4
「癒し」と「自立」
健康について、日々、思ったことを徒然に書き留めています。
「癒し」ばかりでは・・・
先日、とても示唆に富んだマンガがありましたので、みなさんにご紹介します。
ストーリーの概略はつぎのとおりです。
ある世界的なパフューマー(調香師:さまざまな材料から香水を調合する技術者)が、「癒し」をテーマにした香水の調合に食傷しているところに、「フランコン・ド・セル」の調香を依頼されます。
「フランコン・ド・セル」とは、17世紀から20世紀初頭にかけて、社交界の紳士淑女が内ポケットやポーチに常備していた、香水の瓶を細長くしたような容器です。中にアンモニアや刺激臭のある結晶など、いわゆる「気付け薬」を詰め込んだ小瓶でした。
この頃の貴婦人は、コルセットでギュウギュウに体を締め付けていたため、呼吸困難が昂じて気を失うことが良く有りました。そんな時、紳士や貴婦人自身が鼻先に蓋をあけた小瓶をそっと忍ばせ、正気をとりもどすための必需品でした。
「癒し」をテーマにした香水の調合に飽き飽きしていたパフューマーは、その仕事に関心を寄せ、小瓶につめる結晶にやわらかいアロマをほどこした「フランコン・ド・セル」を作り上げます。曰く「現代人に必要なのは癒しだけではない。正気を取り戻して、誇り高く立ち上がることこそが必要だ」
場面変わって、ある企業の経理部につとめるOL。
そのOLは経理の腕を買われ、部長に不正経理処理の片棒を担がされる毎日。
そんな日常の中で、仕事への熱意も使命感も失せ果てていました。
ある時、監査が入り部長は頬かむり。彼女ひとりが不正経理の責任をとらされかねない事態となりました。委細承知の監査官は「君はとかげの尻尾切りに会ったわけだよ」と愕然とする彼女に告げます。
失意の家路をゆく途中、ふと見たウィンドーに飾られた美しいガラスの小瓶に引き寄せられ、その「フランコン・ド・セル」の来歴を聞かされます。
「正気を取り戻して、誇り高く立ち上がること」
翌日、OLはガラスの小瓶を握り締め、「フランコン・ド・セル」の香りをひと嗅ぎした後、キッとした歩みで部長の席に詰め寄ります。「正気を取り戻して、誇り高く立ち上がる」ために。
「部長、お話があります。」
マンガはここで終わりです。
「癒し」という言葉は、ストレス社会、成果社会の現代にあって、今や、もてはやされ過ぎのような感があります。「癒し」といえば売れるのですから、あらゆる物が「癒しグッズ」となり店頭を埋め尽くしています。
「癒し」という言葉が商品開発の根幹になり、広告戦略の中心に位置付けられています。
しかし、ただ「癒されて」いるだけでは、社会的な生活に齟齬が生じるだけでなく、健康面においても良い影響を与えないという事も明らかになってきています。
安保徹先生の「免疫革命」(講談社 インターナショナル刊)で詳しく解説されている「自律神経免疫支配理論」では、自律神経の内、「活動」を司り現代社会のストレス下で常に緊張状態にさらされている「交感神経」、この過剰な緊張状態、優位状態が、いろいろな慢性病の根源であると説いています。
しかし、逆に「休養」を司る「副交感神経」が常に過剰に優位にたつと、そのことで病気に陥ってしまうこともあるのです。
交感神経緊張・優位(いそがし過ぎる、頑張りすぎる、強い不安や悲しみ怒り、
ひどい風邪などの病気、免疫抑制薬剤の長期使用、
手術やガンの放射線治療etc)
→ 長期的な持続状態が続くと・・・
癌・胃潰瘍・潰瘍性大腸炎・十二指腸潰瘍・白内障・糖尿病・橋本氏病・
膠原病・甲状腺機能障害・急性肺炎・急性虫垂炎・肝炎・腎炎・膵炎・
化膿性扁桃腺炎・口内炎・おでき・にきび・シミ・シワ・動脈硬化・肩こり・
手足のしびれ・腰痛・膝痛・神経痛・顔面マヒ・関節リウマチ・五十肩・痔・
静脈瘤・歯槽膿漏・脱毛・めまい・高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・狭心症・不整脈・
動悸・息切れ・偏頭痛・しもやけ・冷え症・アトピー・便秘・胆石・結石・脂肪肝・
尿毒症・魚の目・ガングリオン・妊娠中毒症・食中毒・冷や汗・味覚異常・
視力低下・難聴・痛覚の低下・イライラ・怒りっぽい・不眠・喉の狭窄感・
食欲減退・ヤケ食い ・・・・・
副交感神経緊張・優位(リラックスし過ぎる、だらけすぎる、有害物質摂取、
タバコ、炭酸飲料の過飲や大気汚染による酸素欠乏etc)
→ 長期的な持続状態が続くと・・・
花粉症の一部・アトピー・アレルギー過敏症・小児喘息・のぼせ・下痢・
骨粗鬆症・癒着性腸閉塞・かゆみ・痛みの増悪・頭痛の増悪・うつ病・
気力の減退・食欲亢進・拒食 ・・・・・
資料参考:中町クリニック
このようにリラックスし過ぎていても、病気になってしまうのです。
人間の体には体内時計により、交感神経と副交感神経が相互に優位に立つリズムがあります。一日のうち、昼間は活動に適した交感神経優位状態が続き、夜は休息に適した副交感神経優位状態が続きます。
このリズムは昼夜逆転の生活を続けていても、容易に逆転するようなものではありません。昼の間に活動し、日が沈んでいくと体が休養に入りやすい状態になるのです。この一日の自律神経のリズムに適った生活を送ることが、実は一番健康管理に役立つ生活態度なのだと言えます。
忙しい現代社会では、この生活リズムを保とうとしてもなかなか大変な場面があるのは確かです。が、頭の片隅に留意しておいていただければと思います。
また、この自律神経のリズムは数日周期、月周期、季節周期でも変わっていきます。
トレーニングが趣味の方は、経験があると思いますが、ある日は重いダンベルが楽々と上がり、有酸素運動も楽にこなせるのに、数日後は、どうも今ひとつピリッとしない。これは「調子が悪い」と一言ですませがちですが、いわゆる「体調が悪い」わけではないのです。
一流のアスリートでこのリズムを把握している人は、そのリズムに合わせたトレーニングのメニューを作ったりします。そのリズムを上手く調整しながら少しづつスキルを高め、競技日に合わせて行くのです。
このように、「行動」と「休養」の体のリズムに合わせた、メリハリのある生活を送るように心がけることが大切です。
そのためには、「癒される」ことも、もちろん重要ですが、「誇り高く立ち上がる」「自立して一歩を踏み出す」こともとても大事なのです。
けんこ~コラム